第10章
榊原柚葉視点
規則正しい足音が近づいてくる。私の心臓は、胸から飛び出しそうなほど激しく高鳴っていた。
逆光の中から見慣れた姿が現れたとき、私は完全に息を止めた。
榊原奏!
黒いスーツに身を包んだ彼は、揺るぎない決意を秘めて人混みをかき分け、その一歩一歩に確固たる意志が響いていた。その瞳は、私が今まで見たこともないような怒りの炎で燃えている。
「もういい!」
彼の声が、宴会場全体に雷鳴のように轟いた。
会場は一瞬で静まり返り、誰もが息を呑んだ。
高遠陽仁の顔から得意げな笑みが消える。
「榊原奏、いいところに来たな。お前の妹がどんな――」
「黙れ」
鋼のよ...
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