第5章

 車列が冬木家の門前に停まったとき、柚人は腕時計に目を落とした。九時十五分。結婚式の開式まで、あと二時間四十五分。

 車を降りて袖口を直す。執事が足早に出迎え、使用人たちが大量の生花を運び込んでいる。リビングではスタイリストが機材の最終調整を行っていた。すべてが秩序立って動いている。

 こうでなくてはならない。

 ぐるりと視線を巡らせたが、紅葉の姿はない。おそらく二階で身支度を整えているのだろう。それでいい。またしても無意味な口論を繰り広げる手間が省けた。

「白瀬様」

 タブレットを手にしたウェディングプランナーが歩み寄ってきた。

「式の進行について、もう一度ご確認を……」

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