第157話

キャサリンが一歩前に出た。

私は一歩後ろに下がった。

彼女のヒールがタイルをこする音がした。

私の肩が棚の角にぶつかった。

二人とも動きを止めた。

彼女は再び微笑んだ。「新しいスタジオのこと、聞いたわ。立ち寄ってお祝いを言おうと思って」

「お祝いは受け取ったわ。出口はあっちよ」

「何時間も歩きっぱなしなの。もう少しここで脚を休ませてもらえないかしら?」

「何? リースは運転手もベビーシッターも用意してくれないわけ? それにしても、なんで真冬に大きなお腹を抱えてうろついてるの?」

彼女は歩みを止めた。

そして、俯いた。

二筋の涙が頬を伝った。

「争いに来たんじゃないの」彼女は囁いた。「なんでそん...

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