第16話

アシュトンが廊下を見渡していると、階段室のドアが勢いよく開き、ミラベルが飛び出してきた。

彼女は激怒しているようだった。もちろん、息をのむほど美しい――だが、猛烈に怒っていた。

そして、不快な後味のように、リース・グレンジャーが彼女の後に続いた。

アシュトンの顎がこわばった。直接会ったことはないが、写真と徹底的な身元調査で顔は知っていた。

リース、元婚約者。信託財産で暮らす男で、怒りの制御に問題を抱え、精神的成熟度は濡れた靴下なみらしい。

リースの顔つきを見た瞬間、アシュトンは次に何が起こるかを悟った。あの表情――とんでもなく馬鹿なことをしでかす直前の、愚か者が浮かべるのと同じ顔だ。

アシュト...

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