第198話

二階の個室は、トリュフオイルと熟成されたリカーの香りがした。

カシアンは両腕を広げ、にやりと笑いながら一歩前に出た。「ずいぶん待たせたじゃないか。まるで俺が保険のセールスでもするかのように、ディナーの誘いをかわし続けて。メディア事業に興味があると言ってただろ。だから、制作会社のトップを三人連れてきた。いずれも大物だ。全員、切れ者だよ」

アシュトンは一度だけ頷いた。「わかった」

部屋に足を踏み入れると、彼は室内を見渡した。

三人の男たちが即座に立ち上がった。

スーツは胸のあたりが窮屈そうで、腕時計は磨き上げられ、笑みは過剰なほど媚びへつらっていた。

その時、彼女が目に入った。

ローワン・ヘイルは...

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