第207話

もっと強く引いて、アシュトンをベッドに引き戻した。「もうやめて。今夜はしないから」

アシュトンは私の手に視線を落とす。彼の腕はまだ私のグリップに捕らわれたままだ。

ゆっくりと息を吐き、彼は私に引かれるまま隣に腰を下ろした。

彼の手指が、硬く、温かく、私の手のひらを滑った。

「本当に我慢できると思ってる?」と彼が訊ねた。

「ええ」と私は即答する。効果を狙って、わざとあくびまでしてみせた。「疲れてるの。明日はスポンサーイベントがあるし、ボロボロの顔で出るのはごめんだわ」

身を横たえようとしたが、彼は手を離さなかった。

まっすぐ彼の胸に引き寄せられ、吐息が耳を掠める。「俺は無理だ」

「じゃあ冷たいシ...

ログインして続きを読む