第253話

リヴォリ通りを爆走し、オスマン大通りをかすめ、8区へと向かう。道中、交通法規の六つや七つは破っただろう。

オテル・プラザ・アテネの前で、車は甲高い音を立てて急停止した。俺は飛び出すと、ボーイに鍵を放り投げ、笑顔で挨拶しようとするコンシェルジュを吹き飛ばすように通り過ぎ、エレベーターのボタンを滅多打ちにした。

リアの悲鳴がまだ耳に残っていた。

電話口での彼女の声は恐怖に満ちていた。考える暇などなかった――ただ、行動あるのみ。

エレベーターは這うように昇っていく。もどかしいほどに、遅い。

ようやく扉が開き、俺は柔らかな照明に照らされた廊下に足を踏み出した。絨毯が敷かれ、香水が香り、趣味の良い完璧な...

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