第266話

「会社が清算されたら、僕たちはすべてを失う。CADモデルも、ポートフォリオも、在庫も。僕の経歴なら他で仕事を見つけるのは簡単だけど、この会社が好きだし、この仕事が好きだ。だからここに残りたいんだ」

ピーター・カールの声からは、いつもの軽やかさが消えていた。

「でも、私に何ができるっていうの?」彼がなぜ私に会社を救えると思っているのか、まだ理解できなかった。私自身も窮地に立たされていたのだ。ファブリツィオがいなくなり、彼との共同事業は終わり。この二ヶ月間注ぎ込んできた製品の発売も、それとともに消えてなくなる。

投資した金が戻ってくる望みは、とうに捨てていた。残された道は、ここを去ることだけだと思...

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