第267話

「おい、貴様、待て!」

振り返ると、アントワーヌ・マルシャンが怒りに顔をこわばらせ、裁判所の階段を駆け下りてくるところだった。

ピエール・マルシャンのようなマンチャイルドを生み出すには、彼を甘やかして育てた親がいたに違いない。甘やかしていたのは母親ではなく、父親の方だったと判明した。

一時間ほど前、アントワーヌは弁護士の一団を引き連れて法廷に乱入してきた。単なる暴行事件にしては、ばかげたほど大げさな対応だった。彼らの画策と、レアが俺に囁いたところによれば、しかるべき相手への多少の袖の下のおかげで、ピエールは軽いお叱りを受けただけで済んだのだ。

アントワーヌは不満だった。彼は俺を、加重暴行、器物...

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