第268話

「あなたの彼氏はどこ?」と私は尋ねた。

「買い物よ。有名なパッサージュ・デュ・デジールのことを聞いて、そこの商品をどうしても見たいんだって」イヴェインは席に滑り込み、ゆっくりとレストランを見渡した。「いい店を選んだじゃない。三つ星の店で奮発するなんて、よっぽど大きなお願い事でもあるんでしょ」

「親友のためなら一番いいものを、ね」彼女に会えたことがどれほどの安堵だったか、私は口にしなかった。彼女は何も言わなくていい。ただここにいてくれるだけで、この異国の街で私の心の錨となってくれる。私が必要としていたのは助言というより、彼女の存在そのものだった。

彼女はスキー三昧で頬を輝かせ、上機嫌のようだった...

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