第279話

かなりの距離を歩いたが、ヨットの残骸らしきものは他に見つからなかった。

足が痛み始め、私は無意識にそこをさすった。前方には、ただ果てしない砂浜が伸びているだけだ。

いらだちが募ってきた。この島は、たった二人で捜索するには広すぎる。なのに、救助隊――もしいるとして――に見つけてもらうには、あまりにも小さすぎた。

その考えは胸の内にしまっておいた。考えれば考えるほど、時間を巻き戻して、ダイビング旅行に飛びついた自分を、そしてアシュトンをこんな厄介事に巻き込んだ自分を、平手打ちしてやりたい気持ちが強くなる。

そのとき、アシュトンが砂浜から外れていることに気づいた。

彼は森に向かってまっすぐ進んでいる...

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