第286話

スカイラインへの帰りのフライトは、機長が七時間弱だと主張していたにもかかわらず、果てしなく長く感じられた。

精神が堂々巡りをしているとき、時間は時計に従ってはくれない。

客室乗務員が手に押し付けてきたシャンパンにはほとんど口をつけなかった。代わりに、フライトの大半を楕円形の窓から雲を眺めて過ごし、銅のような味がするまで頬の内側を噛み続けた。

隣の席の男――紺色のスーツを着こなし、役員会議で通用するレベルに磨き上げられた笑顔を浮かべた、いかにもやり手といった感じの重役風の男――は、私が格好の話し相手に見えたようだった。

「スカイラインへは初めてですか?」男は、上空一万メートルでも人脈作りに励む人...

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