第50話

ソファで半死半生になりながら、癒やしを求めて犬の動画を眺めていると、ドアを激しく叩く音がした。

食べ物は注文していない。イヴェインが今夜来る予定もない。

それに、このフロアに来るには居住者用のパスが必要だ。となると、残るは……。

溜め息をつき、ドアを開ける。

やっぱり。そこにいたのはリース・グレンジャー。誰かに最高級シャンパンのクリスタルにでも小便をひっかけられた、とでも言いたげな不機嫌極まりない顔をしていた。

「お断り」と即答し、バタンと閉めようとした。

彼が足を突っ込んできた。「俺を避けてるのか? 言いたいことがあるんだ!」

「なら言え。そして帰れ」

「俺への当てつけであの男と結婚したって...

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