第69話

アシュトンの手が、私の背中をゆっくりと、慎重に撫でてくれた。二十分にも感じられる数分後、背骨が体から飛び出しそうになる感覚がようやく収まった。

変なところに気づくものだけど、彼のシャツの柔らかさが気に入った。

それから彼の匂いも。清潔で、高級そうで、ほのかに香るウッディなトーンが、あからさまではなく私を落ち着かせてくれる。

それが好きだった。

そして、このハグ自体も、だんだん好きになり始めていた。

やっと居心地が良くなってきたと思った矢先、アシュトンが口を開いた。

「まだ硬すぎる。誰もいないところで俺相手にそんなにぎこちないんじゃ、パーティーでみんなを騙せるわけがない」

は?

もう十分リラック...

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