第79話

翌朝、私たちは車の中で危うく一線を越えそうになったことについて、口にすることはなかった。

何事もなかったかのように振る舞うのが、大人な対応だということは分かりきっていたから。

テーブルを挟んで広がる沈黙は、まるで質の悪いWi-Fiのようだった。不安定で、張り詰めていて、いつ接続が切れてもおかしくない。

最初に沈黙を破ったのは私だった。「ひとつ、聞いてもいい？」

アシュトンが顔を上げた。「もちろん」

「あの日、LGHに行ったの。そしたらドミニクが、あなたは女優さんとデートだって言ってた。オクタヴィア・グレイっていう。でも昨夜、彼女本人からあなたたちはただの友達だって聞いたわ。じゃあ、あなたが本当...