第10章 クズ男が言いがかりをつける

「はい、奥さまは現在、フレンチレストランに。場所は――」

九条司は電話を耳に当てたまま玄関を飛び出し、通話を切るや否やアクセルを踏み込んだ。

フレンチレストラン。店の奥、ボックス席。

入った瞬間、九条司の視界に九条知夏が映る。一直線に近づき――その向かいに、背筋の伸びた男が座っているのを見て足が止まった。

前にすれ違った車の、あの男だ。

知夏が「知らない男」に向けて、ぱっと花が咲くみたいな笑顔を見せる。

その瞬間、九条司の表情が、氷のように凍りついた。

――いつから、あんな顔を俺に見せなくなった。

胸の奥がきゅう、と酸っぱく締まり、次いで煮え立つような怒りが押し寄せる。裏切ら...

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