第102章 許せない

「司……」

清水環奈はそっと手を伸ばし、ハンドルを握る男の大きな手に自分の掌を重ねた。

「心配しないで。私が一緒に、この苦しい時期を乗り越えるから」

九条司は無言で手を引いた。

「自分が何を望んでるのか、ちゃんと考えておけ」

そう言って一度言葉を切り、数秒後、さらに付け加える。

「その時は俺に言え。ただし――九条夫人の座以外でな」

けれど、清水環奈が欲しいのは、まさにその九条夫人の座だった。

手に入らないものほど、欲しくなる。

あの頃の彼女は金を選んだ。

なら今度は、愛を選ぶ番だ。

誰もが羨む九条夫人にさえなれれば、人も、金も、名誉も――全部手に入る。

「分かった。ち...

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