第105章 きっぱり否定する

着信音がしつこく鳴り続ける。

画面に表示された「黒崎冬馬」の四文字を見た瞬間、温井知夏の顔から血の気が引いた。

自動で切れそうになるまで逡巡し、ようやく意を決して通話ボタンを押す。

「……冬馬さん」

「起こしちゃった?」

低く、磁力を含んだ声が受話口から流れ込んでくる。

その声は――昨夜、彼女の耳元にまとわりついて、一晩中離れなかった。

夢の中の黒崎冬馬は、今よりももっと掠れていて、もっと人の心を攫う声をしていたのに。

知夏の耳の奥が、じわりと熱くなる。

返事がないのを気にしたのか、黒崎の声に心配が滲む。

「知夏?」

「大丈夫か?」

知夏ははっと我に返り、慌てて言った...

ログインして続きを読む