第109章 扉を開けてよ

三十分ほどして、黒崎冬馬がようやくバスルームから出てきた。腰にはバスタオルだけを巻き、寝室へ足を踏み入れる。

その瞬間、空気の違和感が肌を刺した。

黒崎冬馬の冷えた眼差しが、刃のようにベッドへ突き刺さる。

掛け布団が――わずかに盛り上がっている。

「誰だ。出てこい」

低く、凍りついた声。氷の刃が布団の中の人間を貫いたみたいに、内側がびくりと震える。だが、すぐには出てこない。

黒崎冬馬は危険なほど目を細めた。

「二度は言わない」

数秒――忍耐が尽きかけた頃、ようやく布団がめくられ、濃い化粧の顔が現れた。

女はまつげを震わせ、顔に焦りを滲ませる。

「く、黒崎社長――」

黒崎...

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