第11章 娘が病気になる

「行け。娘はいま、お前を必要としてる」

九条司のその言葉は、間違っていなかった。

杏奈は発作を起こすたび、とくに母親にべったりになる。

九条家の別邸。

九条知夏は帰宅して、玄関に足を踏み入れた瞬間、耳にしたくない声を聞いた。

「杏奈、いい子。パパはすぐ戻ってくるよ。私もずっとここにいるからね」

――清水環奈がいる。

車中で九条司のスマホが通知音を鳴らしたのは知っている。あれは、清水環奈が娘の幼稚園へ迎えに行き、先に家へ連れ帰ったという知らせだったのだろう。

だから彼は「娘は家にいる」と言った。

立ち止まった知夏に、九条司が促す。

「何してる。入れ」

九条知夏は唇を引き結...

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