第113章 理由のない喪失感

「黒崎さん、まず診させてください」女医が恭しく答えた。

「ついて来い」黒崎冬馬はそう言って踵を返し、主寝室へ向かって歩き出す。

女医はその背を追って主寝室へ入った。

秘書はリビングに残り、動かなかった。

黒崎冬馬は、女医が温井知夏の体を診察する様子を、目を逸らさずに見届けた。

数分後。

黒崎冬馬が詰め寄る。

「どうだ。解けるのか」

「完全には無理です。薬効が強すぎます。性交で抜けない場合は……相当つらい時間を過ごすことになります」

その言葉に、黒崎冬馬の眉間がきゅっと寄った。

「薬で抑えろ。できる範囲でいい」

「承知しました」

女医は視線を伏せたまま医療鞄を開き、注射...

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