第16章 死地から逃れる

死に際の幻聴だったのだろうか。

でなければ――どうして黒崎さんの声が聞こえる?

九条知夏が傷つけられているのを見た瞬間、黒崎冬馬の視線は刃のように冷え、顔つきは凄みを帯びた。全身から、殺気が噴き出す。

誰も反応する間もなかった。

黒崎冬馬は犯人を一撃で蹴り倒し、そのまま拳を振り下ろした。雨粒みたいに、容赦なく。胴へ、顔へ――

どうして、彼女に手を出した。

男の悲鳴が山中に響き渡る。

幸い、駆けつけた警官が間一髪で止めた。でなければ、黒崎冬馬は本当に殺していた。

犯人は地面に丸まり、犬のように呻いていた。陰険だった顔は腫れ上がり、原形すら分からない。

黒崎冬馬は地面に倒れて意...

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