第176章 彼を追い出せ

「感じるか?」

黒崎冬馬はそう言うと彼女の手を握り込み、有無を言わせぬ力で自分の胸元へ押し当てた。

掌の下で、強く脈打つ心臓。

ドクン、ドクン、ドクン――

一拍ごとに、温井知夏の心まで乱されていく。

「……あ、あなた、先に帰って」

温井知夏は手を引き抜くと、背を向けて足早に階段を上がった。どこか逃げ出すみたいに。

慌ただしく二階へ消える背中を見送り、黒崎冬馬は薄い唇をきゅっと結ぶ。瞳の奥が、深く沈んだ。

数秒後。

黒崎冬馬は足を踏み出し、後を追って二階へ上がった。

寝室。

扉は半開きで、隙間から灯りが漏れている。

黒崎冬馬は扉を軽く叩いた。返事はない。迷った末に、そっ...

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