第219章 お母さんごめんなさい

手に取るたび、九条司の指先は小刻みに震えた。

捨てようと思えば捨てられる。けれど、どうしても捨てられない。

それは彼に残された、たったひとつの「思い出」だった。

これまでまで失くしたら――本当に、何も残らない。

宮野正彦が電話を受けて駆けつけたとき、九条司はリビングの床に座り込んでいた。周囲には空になった酒瓶がいくつも転がっている。

「……また、こんなに飲んだのか」

正彦は眉をひそめ、司の手から酒瓶を取り上げた。

九条司は顔を上げる。目が真っ赤だった。

「正彦。俺って……最低だよな」

正彦はため息をつく。

「まあ、最低だな」

「昔はさ、あいつが俺から離れられないって思っ...

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