第27章 まさか温井知夏はこんなに早くから彼のことが好きだった

「捜しても無駄よ。知夏は……そもそも帰ってきてないんだから」

温井千代が低く言い放つと、こめかみの血管がぴくりと浮いた。だがそれでも、九条司が二階へ上がるのを止めきれない。

――まあ、いい。

娘はいない。

九条司が家の中をひっくり返そうが、見つかるはずがない。

温井千代は何事もない顔でソファに腰を下ろした。

二階。

九条司が向かったのは、温井知夏が嫁ぐ前に使っていた部屋だった。

けれど、そこは――空っぽだった。

ベッド、クローゼット、机。必要最低限の家具だけ。物は几帳面に整えられている。

机の上には、薄く埃が積もっていた。

温井知夏が一度もここへ戻っていない、その証拠。...

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