第29章 妊娠していなかった

「……い、言える」清水環奈は視線を泳がせ、深く息を吸い込むと、歯を食いしばって一気に吐き出した。「私……妊娠してないの!」

「……は?」九条司が固まった。

「司、これは誤解なの」清水環奈は慌てて言い訳する。「最近、あれが……その、調子がよくなくて。今月まだ来てないから、妊娠したって思い込んで、それで……」

一言増えるたびに、九条司の眉間はきつく寄っていく。

冗談で済む話か……?

九条司の脳裏に、あの夜がよみがえる。温井知夏が二階から階段を踏み外し、額を切って血を流した光景。

――自分は、何をした。

清水環奈を病院へ連れていくことしか頭になくて、温井知夏が赤い目で「子どもは誰の子...

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