第54章 日の目を見ない不倫相手

心臓が、一瞬止まった。

温井知夏は呆然と、黒崎冬馬の整った横顔を見つめる。胸の奥が太鼓みたいに鳴りっぱなしだ。

ドクン――ドクン――ドクン――

黒崎冬馬がまぶたを伏せるように視線を落とし、彼女と静かに目を合わせた。

深い青の瞳の奥に、温井知夏の姿がはっきり映っている。

小さく。

まるで、そこに入るのは彼女ひとりだけと言わんばかりに。

鼓動が、さらに速くなる。

黒崎冬馬が低く尋ねた。

「顔、こんなに赤い。怖かったか」

掠れた声が妙に甘く、耳の奥に絡みつく。

温井知夏は視線を泳がせ、羞じるように首を振った。

「……ううん」

黒崎冬馬が怖いのか。

違う。

彼は彼女に危...

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