第59章 創立50周年記念式典

「知夏――」九条司は顔面を蒼白にし、薄い唇を震わせたまま、まともな言葉ひとつ吐けずにいた。

「何を言われても、もう振り向かない。だって私、もうあなたを愛してないもの」

温井知夏は嘲るようにそう投げ捨て、踵を返して立ち去る。

小さな背中が容赦なく遠ざかっていくのを見届けた瞬間、九条司の身体がぐらりと揺れた。立っていることすらやっとで、次の刹那、何かが視界の奥から転がり落ちた。

反射的に手で拭う。

指先に残ったのは、湿った感触――涙。

俺が、泣いてる?

これまでずっと、彼は高みから見下ろし、温井知夏が自分の前で何度泣こうと、冷ややかに眺めてきたというのに。

一瞬、現実感が抜け落ち...

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