第77章 彼女の光

「……ごめんね——」

ちゃんと、さよならを言う暇もなかった。

温井知夏は疲れ切ったように目を閉じた。

九条司は清水環奈をようやく立たせると、池の中でもうもがいていない温井知夏の姿を見た瞬間、目を見開いた。

「知夏!」

そのまま飛び込もうとした九条司の腕を、清水環奈が慌てて掴む。

「司、足が……すごく痛いの」

九条司は顔を歪め、怒鳴りつけた。

「放せ! 知夏を助けるんだ!」

その剣呑な目に怯え、清水環奈はたまらず手を離す。

——だが、そのとき。

九条司よりも速く、一つの影がしなやかに宙を切った。池へ飛び込み、一直線に温井知夏へ向かって泳いでいく。

黒崎冬馬だった。

黒...

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