第90章 お墓参り

「うん、私たち……」温井知夏が「もう帰ろう」と言いかけた、そのとき。

カシャッ――

不意に、シャッター音がした。

二人は同時に音の方へ顔を向ける。

そこにいたのは、キャップを深くかぶり、黒いマスクで顔を隠した不審な人物だった。完全武装のまま、こちらへレンズを向けている。

温井知夏は一瞬固まり、反射的に男の手から自分の手を引き抜いた。

「冬馬……盗撮されてる」小さく、掠れた声。

「見えてる。たぶん、どこかのゴシップ紙のパパラッチだ」黒崎冬馬は落ち着いた声で宥める。

「怖がらなくていい。逃がさない」

黒崎冬馬の視線が氷みたいに冷える。遠くの男を、鋭い蒼い瞳が射抜いた。

撮られ...

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