第8章

玲子視点

私はクラブの消えゆく光を見つめていた。かつては蓮司のプライドと権力の中心だったその場所が、今や彼の悪夢の始まりとなった。

奈央がバックミラー越しに私を一瞥する。その瞳には心配と理解の色が混じっていた。

「で、ウィッシュリストの最初はどこにするの、水原さん?」

「サーフィン」と私は微笑んだ。「十年も、危険だからって蓮司が絶対にやらせてくれなかったの」

「南風ヶ浜に初心者にうってつけの場所がある」と颯が言った。まるでリズムでも取るように、指先で軽く車のドアを叩いている。「日の出と同時に行ける。あそこの日の出は、もう、本当に――」

「別世界みたいに綺麗だって」私は彼の言葉...

ログインして続きを読む