第12章

もし――柚木結華が、スマホに映ったあのメッセージを見ていなかったら。

もし――ソファの裏で、彼と林田清美の薄汚い関係を耳にしていなかったら。

きっと、彼の言い訳を信じてしまっていた。

思い返すほどに胸が荒れる。

これまでの数々は、全部、九条陽向の芝居だったのだと。

そんなクズ男を、どうして簡単に許せるだろう。

復讐はもう決めた。

それでも、九条陽向が平然と嘘を重ねるのを見ていると、胸の奥がちくりと痛む。――三年という、取り返しのつかない時間を、無駄にした自分が悔しい。

「結華――」

千堂椿は、彼女の異変を見逃さなかった。心配と苛立ちが混じった顔で、結華の手をきゅっと掴む。

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