第16章

ドンッ、と音を立てて、開いていたドアが閉められた。

見なくても誰だかわかる。

今日、九条獅堂の許可が下りない限り――彼女は帰れない。

柚木結華は男の視線を浴びながらスマホの画面を滑らせる。千堂椿からのビデオ通話。

指先に力が入り、受話ボタンを押せずにいた。

すぐ横に獅堂がいる。しかも二人とも、服が少し乱れている。こんな状況で出られるわけがない。

それでも、椿に頼んだ件を思うと、今すぐ出たい気持ちが喉元まで込み上げてくる。

数秒の膠着の末、獅堂は彼女の躊躇を理解したのか、長い脚でくるりと背を向け、ウォーターサーバーのほうへ歩いていった。

結華は慌てて目立たない角度に身を寄せ、通...

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