第27章

九条陽向の顔に浮かんだ笑みが、ほんの一瞬だけ引きつった。だがすぐに何事もなかったかのように整え直し、デスクの奥から立ち上がって柚木結華を迎える。

「結華、来たんだな」

柚木結華は身体をわずかに傾けるようにして林田清美のほうへ向かい、九条陽向が差し出した手を、音もなくするりとかわした。

「あなたもいるの?」

眉を少しだけ吊り上げたその目は、柔らかいはずなのに、刃みたいに問い詰めてくる。

林田清美は無垢を装って見返し、甘く柔らかな声を落とす。

「はい。オークションの細かいところを、陽向兄さんと相談しに来ましたの」

さっき、九条陽向が結華のために立ち上がったことも――清美は見ていた。...

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