第33章

柚木結華は七瀬伊江と楽しく食事をしていて、着信に気づかなかった。

「結華、スマホ光ってるよ」

七瀬伊江が促す。

柚木結華は画面に表示されたLIMEの名前が「九条」だと見た瞬間、背筋がすっと冷えた。九条陽向の表示名はこれじゃない。つまり――九条獅堂。

互いに友だち追加だけはしてある。けれど一度も会話したことがないから、メッセージ画面は真っ白のままだ。

指先が、不自然にぴくりと動いた。

「どうしたの?」

七瀬伊江が不思議そうに首を傾げる。

「ううん、何でもない」

柚木結華はスマホを伏せ、何事もなかったふりで箸を進めた。けれど頭の中では、獅堂が言う「渡すもの」とは何なのか、それば...

ログインして続きを読む