第40章

残業を二時間こなし、柚木結華は首をくいっと回してから大きく伸びをした。最後のデザイン図に満足げに目を落とし、保存する。あとは退勤するだけ。

迎えの車を呼び、自宅へ戻る段取りを済ませると、エレベーターで地下の駐車場へ降りた。到着を待つためだ。

エレベーターを出た瞬間、短いクラクションが耳に入る。反射的に視線を向けると、少し先に車が停まっていた。窓がゆっくり降り、彫刻みたいに整った男の横顔が覗く。片手をハンドルに預けたまま、男は静かにこちらを見た。

「乗れ」

低く艶のある声。深い瞳。

退勤ラッシュは過ぎているとはいえ、ここは柚木家のオフィスビルだ。行き交うのは同僚ばかり。結華は、二人の...

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