第47章

個室に戻った九条陽向は、魂が抜けたみたいだった。

片手で唇をなぞりながら思考が暴走する。頭の中は、柚木結華の――息を呑むほどの体のラインと、仮面に隠された素顔のことばかり。

……たまらなく煽られる。

原始的な衝動が、体の奥でしつこく疼いていた。

男の勘が告げている。あの個室にいた男は、ただ者じゃない。

もし、個室の中に「男と女、二人きり」だったら――そう想像しただけで、九条陽向の胸の内を無数の虫が這い回るようにざわついた。

個室に入れないなら、柚木結華を外へ呼び出せばいい。

そう思い立ってスマホを取り出し、柚木結華に電話をかける。だが受話口から返ってきたのは、柔らかいのに見知ら...

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