第170章 落ちたでしょ?

来栖琴音は相手を値踏みするような視線を引っ込め、資料を両手で差し出した。

女はそれを受け取ると、ぱらぱらと適当にめくっただけで、冷えた声で言い放つ。

「もういいわ。戻って」

ここまで露骨にあしらわれれば、琴音だって気分が悪い。社会人として最低限の礼儀すらない、と内心で舌打ちする。

たぶん――自分の視線が長く相手に留まりすぎたのだろう。気づかれた。

女がふっと目を上げ、琴音を射抜くように睨む。声の刃が一段と鋭くなった。

「……まだ何か?」

不意を突かれて、琴音は言葉に詰まる。

明らかに歓迎されていない。

仕事じゃなければ、こんな場所に立つ理由なんてない。

浅野琉生の顔が脳裏...

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