第36章 見事な発言

野村は青ざめて、ぶんぶんと首を横に振った。

「琴音さん、言いません! 安心してください、俺、そんな度胸ないです!」

来栖琴音はその言葉を聞いた瞬間、彼が盛大に勘違いしていると察した。

「違うの。私の言いたいことは、川島治には正直に話して。私があなたに顧客資料を出してって言った、って」

「……琴音さん?」

野村の顔に、理解できないという色が浮かぶ。

来栖琴音は、野村に「計略に乗せるつもり」だなんて教える気はさらさらなかった。彼女にとって野村は、あくまで利用する相手であって、対等な協力者ではない。

「言った通りにやればいいの」

そう言い切ると、来栖琴音は野村に顧客の状況をありのま...

ログインして続きを読む