第70章 芝居

「……俺は」

川島治は来栖琴音を見たまま、言いかけて口をつぐんだ。

「琴音に表に出てもらって……この噂を、否定してほしいんだ」

来栖琴音はそれを聞いた瞬間、頭から冷水をぶちまけられたみたいに、つま先まで冷え切った。

川島治――本当に、よくもまあそんなことが言える。

「よくそんなこと言えるわね?」琴音は怒りを噛み殺さずに吐き捨てた。「自分が浮気しておいて、私に尻拭いをさせるの? 私には恥をかく権利すらないってこと?」

川島治は慌てて琴音の手を掴み、必死に弁解する。

「琴音、俺が悪かった。もう分かってる。月乃のため、会社のため……今回だけ、許してくれ。約束する、二度としない」

そ...

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