第9章 トラブル

来栖琴音がビルに足を踏み入れた途端、またしても呼び止められた。相手は、例の若い受付――さっきまでそこにいた女の子だ。

琴音は見逃さなかった。

自分に向ける冷たい視線と、ついさっき「社長奥様」を出迎えたときの、あのへりくだった笑顔。まるで別人だった。

「……また来たんですか」

「川島治に会いに来たの」

今回は引き下がるつもりはない。琴音はスマホを取り出し、野村さんに連絡して通してもらう気でいた。

「予約がない方は――」

その言葉を、突如けたたましく鳴り出した着信音が遮った。

琴音は画面を見て、息をのむ。幼稚園の先生の番号。

まだお迎えの時間じゃない。

嫌な予感が背筋を走り抜...

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