第22章 一度だけ

空っぽだった。

何もない。

彼を削除してからというもの、彼女の投稿はすべて彼の目に触れなくなった。

金曜の午後。林田柊が研究室を出たばかりで、まだスマホを確認する暇もないうちに、坂東宇一が廊下の向こうから早足で近づいてきた。

顔色がよくない。

「林田さん、今、少し時間ある? 話したいことがあるんだ」

林田柊がうなずくと、二人は廊下の突き当たり、窓際へ移動した。

坂東宇一は声を落とす。

「さっき電話があってさ。叔父から。S市にあるうちの研究開発センターのことを嗅ぎ回ってるやつがいるって。しかも、上流のサプライチェーンの契約を何本か止めるって言ってきたらしい」

林田柊の指先がき...

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