第28章 遅れてきた深情は最も安っぽい

林田柊はS市のマンションに戻るなり、バッグをソファに放り投げ、自分もそのまま柔らかなクッションへ重たく沈み込んだ。

白鳥婆さんの小言もない。北斗の嘘と泣きわめきもない。白鳥空弥の氷みたいな顔もない。

――本当なら、楽になったと思うはずだった。

それなのに、スマホ画面に躍った通知が、棘のように視界へ突き刺さる。

『白鳥グループ社長、謎の女性に付き添い妊婦健診へ』

妊婦健診。

その文字が、やけに滑稽だった。

北斗を身ごもっていた頃の自分が、いやでも脳裏に浮かぶ。胎調が安定せず、採血もエコーも心音チェックも、たいてい一人で通った。検査結果を受け取るたび、癖みたいに空弥へ送った。

返...

ログインして続きを読む