第53章 左へ行く

林田柊はその場に立ち尽くし、ソファに沈んで顔を曇らせた白鳥婆さんを見た。それから、玄関脇に立ったまま我関せずの白鳥空弥にも目を向ける。

白鳥家の連中がどう動くか、彼女は痛いほどわかっていた。

今日ここで本気で顔を潰して出ていけば――おばあ様は間違いなく伊波邸に乗り込んで騒ぎ立てる。

胸の奥で、林田柊は冷たく笑う。

白鳥家はいつだって、こんな卑怯なやり口で人をねじ伏せ、折れさせる。

「……わかったわ」

林田柊は家政婦の手を振りほどき、そのまま門の外に停められた黒いマイバッハへ向かった。運転手がすでに後部座席のドアを開けて待っている。

乗り込もうとした瞬間、背後から白鳥空弥が歩み寄...

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