第73章 南斗兄さんは高坂檸檬の才能に驚く

高坂檸檬は冷めた表情で、くるりと背を向けてタクシーを拾おうとした。

これ以上、一言も無駄口を叩きたくなかった。

高坂南斗が追いかけてくる。「檸檬、どうしていつもそうやってはっきり言わないんだ。お前が嫌いだって、俺にわかるわけないだろ」

「言ったわ!」

高坂檸檬はそのギフト用の紙袋をひったくり、地面に叩きつけた。「でも、兄さんたちがそんなに我儘言うなって言ったから、私もこれが好きだってフリをしてただけよ」

前の人生では、兄たちを怒らせないように、何も言えなかった。

しかし、兄たちも彼女の好みを気にしたことなど一度もなかった。

高坂檸檬はタクシーに乗ってその場を去った。前の人生で受け...

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