第7章
和栄の指先は微かに震えていた。仕立ての良いスーツを身に纏っていても、目を凝らせば、シャツの襟元に滲む冷や汗が見て取れるだろう。
これは、周到に仕組まれた舞台だ。
場所は、かつて和栄が佳代子にプロポーズをした、あの会員制クラブ。
清掃員の自宅から高値で買い戻した透明なカプセル──その解毒剤は、目の前のぬるま湯の中に跡形もなく溶けている。無色、無臭。まるで最初から存在しなかったかのように。
扉が開き、佳代子が入ってきた。
無駄のないビジネススーツに身を包み、その表情はどこまでも淡泊だ。まるで、どうでもいい取引先に会いに来たかのような顔つきだった。
個室にいるのは和栄だけ...
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