第5章

帝国ホテルの最上階にあるバンケットホール。そのクリスタルのシャンデリアが、きらびやかな輝きを放っている。

財閥界の中心人物たちが豪奢な衣装に身を包み、シャンパンを片手にビジネスの裏話を囁き交わしていた。

私は橘善和の腕を取り、ゆっくりと会場へと足を踏み入れる。シルクのイブニングドレスが、照明の下で水面のように流麗に揺らめいた。

すぐさま、周囲からお世辞の声が上がる。

「善和くん、奥様は本当に美しく、魅力的だね」

「さすがは橘家の家柄だ」

橘善和はかろうじて笑みを浮かべたが、彼の腕がこわばっているのが私には感じ取れた。

彼の視線は絶えず会場内を何かを探すようにさまよい...

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