第188章

水原念はもともと、目上の人間を重んじる性質だった。

鈴木直哉との離婚が間近に迫っていても、鈴木おじいさんと鈴木おばあさんに対しては、常に変わらぬ敬意を払ってきたように。

だが、顔を合わせるなり難癖をつけてくるような目上の人間にまで、敬意を払う義理はない。

水原念はゆったりと立ち上がり、笑みを浮かべて口を開いた。

「なんだ、夏目おばさんでしたか。私が悪かったですね。せっかく目があるのに、ドア越しに夏目おばさんのお姿を見透かすことすらできないなんて。まったく、叩かれても文句は言えません。ここを出たら、不透明な障害物越しに物を見る方法を、あちこちで教えを乞うてきますよ。そうすれば、次に夏目...

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