第167章 ヴィクトリアは君を相手にしない

橘芹奈は、一瞬にして徒労感を覚えた。まるで馬の耳に念仏だ。

自分自身が滑稽に思えてくる。

不貞を働くような黒田奏多に、まさか自分の立場を理解してもらおうなどと期待していたとは。

それは、屠殺人がこれから屠ろうとする子羊に憐れみを抱くと期待するのと、何ら変わりはないではないか。

一時の感情に流され、危うく忘れるところだった。黒田奏多という男が、どれほど憎むべき存在であるかを。

彼女は冷ややかに鼻を鳴らした。

「その点に関しては、あなたの言う通りね」

「この六年間、私はずっと馬鹿な夢を見ていたわ。時間を無駄にして、他人が理解してくれるなんて妄想に浸っていただけ」

現実は、黒田奏多...

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