第170章 また殴られたいのか

通話を切ってもなお、橘芹奈の胸のつかえは取れなかった。

いっそ明日にも市役所に駆け込み、黒田奏多との離婚届を叩きつけてやりたい衝動に駆られる。

芹奈はソファに深く身を沈め、天井を仰いで長く息を吐き出した。

冷静になってみれば、黒田奏多と意地を張り合うことほど愚かな行為はないと思い知らされる。

彼に自分を理解してもらおうなどと期待した自分が、あまりに浅はかだったのだ。

ふと視線を感じて振り返ると、驚いたことに少し離れた場所に陽菜が立っていた。その腕には、以前遊園地で買ったウサギのぬいぐるみが抱きしめられている。

芹奈は慌てて背筋を伸ばし、居住まいを正した。

そこへ久保が子供部屋か...

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